不信任案提出?
2011年6月1日(水)
って何がしたいんだろうか。
ちょっと横道にそれるような気もするが、気になるので、政治には門外漢ながら書く。
私自身は、菅総理を特に支持しているわけではない。総理の人心掌握能力もあんまりほめられたものではなさそうだと思っている(自分に人を動かす能力がないのを棚に上げてるのはわかってるけど、私は総理大臣ではないし、許して下さい)。それから、地震以後とくに原発に対する政府の対応には、ほぼ最初から疑いの目を向けてきたし、地震直後の状況が改めて明るみ出つつある昨今「ほれ見たことか」と思う事が多いのも事実である。政府の不手際の最終責任が内閣総理大臣にあるのは当然だとおもう。
しかし一方で、谷垣自民党総裁や民主党内で造反するとされる鳩山前総理や小沢元民主党代表(というのがいいのか?小沢氏と言っておいた方がいいか?)は、菅総理を退陣させたあと誰が何やるといっているのだろうか、全く見えてこない。「能力がない人には即刻退場いただきたい」とは言うものの、「次」を睨んでいる人がどのような能力を持っているのか、そしてその能力を有する人がその能力をもって「何」をするのか、どうやって「国難」を乗り切って新しい日本をつくるのか、見えない。
それから私にとって最大の疑問は、政府の対応が不味かったとして、本当に問題だったのは誰だったのか?ということだ。さきにも書いたように、菅総理が最終責任者としての責任から逃れられないのは当然だとしても、本当に一部報道に見られるように総理「だけ」が「ヒステリー」で、「パフォーマンスしか考えていなく」て、「部下を信頼して使うということが出来なく」て、政府の機能不全を招いたのだろうか。
今手元にないのだけれど、一部メディアでは、きちんと裏を取っているのか疑いたくなるような記事も多かった。それらの報道のいくつかはおそらく真実をついているものもあったのだろうけれど(たとえば福島第一の吉田所長が海水注入をはじめたことに、横槍をいれて一旦注水を停止させようとした、などは本当らしいと思っている)、茶々を入れたのが総理本人だったのか、官邸(官房長官を初めてとする)だったのか、原子力安全保安員だったのか東電本店だったのかは、など今ひとつわからないことも多い。
総理あるいは官邸の「政治主導」があまりに稚拙で本来の意味をはき違えていたために現場が混乱を来した、という側面はあり得たと思うけれど、では民主党政権でなかったら、あるいは菅直人氏が総理でなかったら、原子力安全保安院と東電本店と現場はスムースに連携し、ここまでの事態にいたらずに済んだのであろうか?私の答えは「ノー」である。「原発は絶対安全だから、事故は起こりません。」を金科玉条(安全神話)に、重大事故がおこることを真摯に想定した対策を考えてこなかったことが、今回適切な対応がとれなかった(起きてしまった事故をコントロールできなかっただけでなく、情報隠しがいくつも生じ、適切な避難体制をとれなかったばかりか、食品基準ほか全てが後手後手に回った)直接的な原因であろう。
そして「安全神話にあぐらをかき、事故がそもそも想定されていない」という状態は、菅氏が総理になる前から、そして民主党が政権を取る前から続いてきたことなのである。もともとは財界(正力松太郎氏)や自民党(中曽根康弘氏)(注1)と通産省(当時)が作ってきた体制が、営々と続いてくる間に、規制する側とされる側の癒着が起こり、安全神話を醸成する土壌が育っていったと言えよう。菅総理と民主党に責任がないとは言わないが、それに比べて自民党や通産省(経産相、原子力安全保安院、原子力安全委員会)の責任を問う声が、大手メディアであまりにもなさすぎることが、私には不自然に思えてならない(注2)。
私自身、現職の大学の卒業生でもある関係で、国家公務員の道を歩んだ同期・友人は多い方なのだろうと思う。彼らの責任感は疑わないし、昨今の公務員たたきの風潮が彼らの能力を縛っていると思う部分も多々ある。しかし、最近の情勢を見る限り、規制・許認可・権益で肥大化した官僚システムが、そろそろ限界に来ているのではないか、という思いもまた禁じ得ない。また別の機会にふれたいと思うが、20mSv/年を決定するにあたっての、誰も責任をとっていない(とれない)構造を見るにつけ、国が基準を示して日本中が従うというモデルが崩れかけているような気がしてならなかった。
今回の不信任案提出は、「政治主導」のもとに官僚組織に縛りをかけてくる菅総理を追い出したい官僚と、政権奪還を目指す自民党がむすび、これまでの仕組みへ戻ろうとしているだけ、という文脈でみると、説明できてしまうことが多すぎるのは気のせいだろうか?一番得をするのは誰なのか、そのことを注意深く見守って行きたい。
追記
念のためはっきりさせておきますが、私は地震後の政府の対応には納得していません。本文中にも少し書きました(起きてしまった事故をコントロールできなかっただけでなく、情報隠しがいくつも生じ、適切な避難体制をとれなかったばかりか、食品基準ほか全てが後手後手に回った)が、その辺の事はまた別途書きたいと思います。一方原発内で今も奮闘を続けておられる皆様には深く感謝し応援する次第です。
注1
たとえば、
武田徹 2011 私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論 中公新書ラクレ
現代史スクープドキュメント(NHK) 原発導入のシナリオ〜冷戦下の対日原子力戦略〜
など。
注2
小泉元総理が軽く「反省」されてますね。元の講義を聴いていないので想像しかできませんが、どうしても「軽く」見えてしまうのは、客観性を欠いてますかね。。。。→毎日jp(2011年5月28日)
2011年6月11日追記
その後東京新聞上で「菅降ろしに原発の影」という記事が出たそうで、少し話題になっていたようですね。
有料会員じゃないとネット上では全文読めないようなので、私は全文は読んでないのですが。。。。
2011年6月12日追記
自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」、別件が入っていて生中継(ニコニコ動画)見られなかったんだけど、そっちをキャンセルしてでも見るべきだったみたい?結局このブログ記事が真実をついている、という確信は深まるばかり。